右耳がなかった少年

誰かの救いになれれば光栄です

右耳って作れたんです。

私は生まれたときから形成外科に一年に一回のペースで通っていました。耳に様子を観察し、記録をとり、耳の形成手術の資料にするからです。しかし、当時は幼少期だったこともあり、なぜ病院に行っているかわかっていませんでした。病院の一階にパン屋があったので、それが私の目的でした(笑)。

母が耳の形成手術について詳しく教えてくれました。

簡単に言うと、体一部から骨と肉を耳に移植して、耳の形を作るという物でした。そうすることマスク、メガネの装着が可能になります。しかし、肝心の聴力が手に入るという子のではありませんでした。これを知って、少し嬉しく、少し悲しく、少し恐怖心を覚えました。

私は右耳がなく、マスクがつけられませんでした。そのため、学校の給食当番や風邪の時には母が作ってくれたゴムを足したマスクを使っていました。正直すぐずれたりして、ストレスが溜まってしまう物でした。耳を作ることでそれが改善されるというのは嬉しいことです。

右耳の聴力がないと何が問題なのかというと、音が鳴った方向がわからないということです。友達が遠くから自分を呼んでも自分は相手がどこにいるかはわかりません。これは学校のコミュニケーションをとる際に苦労をしていました。聴力を得るには別でリスクの大きい手術を受ける必要がありました。そのため、少し悲しくなりました。

当時小学生だった私にとっては移植なんてテレビだけでしか起こりえないものでした。しかし、それが急に自分の前に選択肢として現れたのです。ゆえに恐怖心を覚えてしまいました。

私はとても悩みました。今考えると、小学生には大変な選択にだったと私でも思います。

「どうしよう」

そんなことをずっと考えながら一週間がたちました。